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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1568号 判決 1956年3月31日

控訴人(被告) 東京都知事

被控訴人(原告) 中野ちよ

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟の総費用はこれを十分し、その一を被控訴人の負担とし、その他を控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟の総費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方事実上の陳述ならびに証拠に対する関係は控訴代理人おいて(一)原審において控訴人がなした本件訴は対象を欠き不適法であり却下せらるべきものであるとの主張は撤回する。(二)昭和二十五年六月五日本件土地の換地予定地の指定をなした後右土地につき分割譲渡が行われ、その旨登記簿に記入せられたので控訴人は昭和三十年十月十一日付を以て右指定処分を取消し、被控訴人等に対しそれぞれ右土地を分割して各自の換地予定地を指定し、同年同月十三日被控訴人等に通知したから、現在において被控訴人は本訴を維持する利益がないと述べ被控訴代理人において控訴人が右(二)において主張するような一括換地予定地指定処分が取消され、本件土地の換地予定地分割指定処分が行われ、その旨被控訴人等に通知せられたことはこれを認めるが右換地計画の変更については一定の期間公衆の縦覧に供し、利害関係者をしてその縦覧期間内に右換地計画につき意見のある場合においては施行者に意見書を提出すべき機会を与うべきにかかわらずかかる手続がなされていないから、右換地計画は無効である。従つて本訴を維持する利益がある。とそれぞれ述べ、

立証として新たに

被控訴代理人において甲第七号証を提出し、

控訴代理人において右甲号証の成立を認めた

ほか、原判決事実の部分に記載してあるとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は原判決の理由に示したと同じく本件土地については被控訴人主張のように一括換地予定地指定処分が行われたが、右土地については分割、譲渡が行われ、これ等土地の所有者となつた被控訴人等から右換地予定地指定処分の変更を申立てたにもかかわらず控訴人においてこれを却下した事実を認める。しかしながら控訴人が当審において主張するように控訴人は昭和三十年十月十一日付を以て右指定処分を取消し被控訴人等に対し、それぞれ右換地予定地を分割し各自に対し換地予定地を指定し、その旨の通知をなしたことは当事者間に争がないところであり、かつ被控訴人主張のように換地計画の変更につき縦覧手続がなされなくとも当然無効であるとはいい難いから現在においては被控訴人は前記一括換地予定地指定処分の変更を申立てる実益なく、したがつて本訴請求は理由がないことに帰する。

よつて原判決を取消し、被控訴人の本訴請求を棄却し、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条、第九十条を適用し、主文のとおり判決した。

(裁判官 渡辺葆 牧野威夫 野本泰)

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